アプローチを抜けて玄関扉を開けるとふんわりと広がる、木の香り。無垢材で仕上げられたK様邸には澄んだ空気が漂い、時間の流れも心なしかゆっくりに感じる。
「この家を建てるときに、二人の意見が一致していたのは、『帰ってきたくなる家をつくろう』ということでした。」
家で過ごす時間を大切にしたい、というK様ご夫妻。裸足でも気持ちよく過ごせる無垢材の床、天井を高くとったリビング、ゆったりした大きさのバスルームなど、どこにいても心休まる空間だ。仕事で疲れたご主人が帰ってきて「ほっとする」のは勿論のこと、「育児のストレスも、少ないような気がします。」と語るのは、1歳のお子様を抱っこした奥様。「子どもが小さいうちは、母親は毎日家の中で子どもとずっと一緒ですよね。逃げ場がないというか、それでストレスを感じる人も多いという話を聞いていたんですが、不思議とこのリビングにいると、しんどくないんです。閉塞感がないから、子どもと自然体でくつろげます。」
また、もうひとつ重要視したのは「自分たちの性格に合った『動線』にするということ。玄関ホールを抜けてすぐの場所にリビング、和室、ダイニング。その隣にはキッチン、洗面台、トイレ、バスルームと水周りをぎゅっと集約したK様邸。「常に使う場所は、なるべく一ヶ所にまとめたかったんです。間取りを決める時にすごく悩みましたが、やっぱりこの動線にしてよかった。リビングから洗面室が見えても『ごちゃつき感』が出ないように、洗面室の扉を開けたところには棚をつくってもらい、カゴやリネンでかわいく目隠しできるようにしています。」
笑顔でマイホームのこだわりを話すK様ご夫妻だが、家を建てると決断するまでに、迷いや悩みはなかったのだろうか?
「勿論、ありました。というか、まず『自分たちが本当に家をほしいのかどうか』『なぜ今ほしいのか』というところから話し合いました。転勤もあるし、どのくらいお金が要るのかも分からないし…。でも、話し合った結果やっぱり二人とも『自分たちの空間がほしい』という思いが強いことを再認識して、家を探し始めたんです。」
とはいえ、「家を建てる」となると現実感がわかず、最初は建売住宅を見て回っていたという。そこで、当時住んでいた家の近所でオープンハウスをしていたシーズ営業担当と出会う。
「『まあ、この家を買うかどうかはおいといて、何でもご相談にのります。』という力の抜けた(笑)雰囲気にこちらもリラックスして、そこから色々物件を紹介してもらいました。建売で真剣に検討したものもあったのですが、やはり心のどこかで『建てたい』という思いがあって…。色々話を聞くうちに、予算的にもいけるかもしれないという可能性が見えてきて、住み慣れた場所でたまたま土地が出たこともあり、そのままシーズさんに建物もお願いすることになりました。」
そうして奥様が見せてくれたのは、何冊もの手書きのノート。
家探しのスタートで悩んだところから、ゆずれない条件、理想の間取り図、たくさんのスクラップ…。そこには、マイホーム完成までの道のりがしるされていた。
「家を建てると決めてからも、自分なりに色々調べて、何度も設計の方や工事の方と打合せをさせてもらいました。無垢材も、最初は入れるつもりはなかったんです。でも年末年始に小休止している時に考えが変わりまして。年明けの地鎮祭の時に『やっぱり無垢材入れたいんですけど…』と工事の方にお願いしたら、『いいですよ(笑)』と快くOKしていただきました。そういう細かい変更とか色んな質問を、面倒がらずに受け止めてくれたのがよかった。現地にも何回も足を運んで、大工さんともたくさん話をしましたよ」と、奥様。
周りの話に耳を傾けながら、自分の思いを伝える手間を惜しまない、というK様の姿勢が、家づくりにおける最大の成功ポイントだったと言える。
リビングから出られる日当りの良いウッドデッキは、ご主人が自分でペンキを塗った力作。「実は門柱のところも自分で塗りました。ちょっとペンキがはみ出してますが…。」と笑うご主人。日々の暮らしを楽しみ、マイホームを大切にしていきたいという思いが伝わってくる。そんなご主人、家を建てる中で奥様から改めて学んだことがあるという。
「人の話をきちんと聞くって、大事なことやなと思いました。僕はどちらかというと面倒くさがりで、例えば買物に行ってもさっさと終わらせたくて店員さんの話をあまり聞かない。でも妻は、どんな話でも興味津々で聞いて、たくさん質問するんです。家を建てるときもそうでした。自分の専門のことを、聞かれてイヤな人っていないでしょ。だからこの家に関わった人みんなと仲良くなれて、結果として良い家ができたのかな、と思います。」
多くの人に愛され、月日が増すにつれ風合いを増していく家。
K様のコンセプトどおりの「帰ってきたくなる家」が、確かに実現していた。